悲しいかな、アフリカのニュースは紛争が起こらないと伝えられない、そんな状況だ。
ナイジェリアの話題は、サッカーの話題が主で、あまり他のニュースは伝わってこないような気がしている。
ナイジェリアの歴代軍事政権は、石油の利権を握って懐を暖めてきた。
なので、政府に少しでも反発しようものなら、ありもしない理由をつけて処分してきた。
人権と言う概念のない国なのだ。
人は誰しも環境の良い所で生きたいと思うし、特に故郷は大切にしたいものだと思う。
ケン・サロ=ウィワは、自分の故郷とそこに住んでいる人たちを守るために、静かに、けれども毅然とした運動を行った。
彼は、アフリカにおける作家は政府から無視されること(識字率が低いために)を逆に利用した。
彼は、作家だからこそ、その知識を生かしてこの運動ができた、この運動をしなくてはならないと使命を持っていた。
ナイジェリアの作家たちは、これまでも“政治”に関わって来たとケンは言っている。
作家は“言葉”を持っている。
“言葉”は力だと。
アフリカは、黒人による国家=黒人同士だから、先住民の問題などない、というのが世界の見識だった。
アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドの先住民のことは良く知られているが、アフリカは知られてなかった。
でも、インディアンやアボリジニのように、ナイジェリアではザンゴン・カタフやオゴニがそれに当たる、とケンは訴える。
多国籍企業のシェル石油は、オゴニから採れる石油で300億ドル(ケンが本を書いた時期なので、1993~4年頃の数字)を奪っていった。
オゴニの人たちは環境破壊のために病んでいる。
人だけではなく、植物も動物も魚も死に絶え、土地は荒廃している。
“戦争”は起こっていないが、これは異常な“戦争”だ、と。
ナイジェリア政府は、オゴニの自治を認めず、奴隷状態に置いている。
もちろん、石油の利権を我が物にしておくためだ。
ケンは一生懸命、国際社会に訴える。
オゴニを救うことができるのは国際社会だと。
テレビやラジオは政府が握っているので、国民には新聞や雑誌で訴えた。
オゴニでは、このために新聞を読む人たちが増えたと言う。
彼は、プロデューサーの経験を生かして、オゴニの運動をうまく宣伝していった。
また、シェル石油に対しても、毅然として訴えていった。
当時、シェル石油は自分たちの非を認めようとはしなかったし、情報を開示しようともしなかった。
それどころか、ケンを非難するばかりだった。
が、まず、どんな環境アセスメントを行ったのか情報開示するようにケンは要求した。
そして、いつかシェル石油が自分たちのしたことが間違っていると気づくだろうと希望を持っていた。
当時、シェル石油は、石油生産高の20%をナイジェリア政府に支払っていた。
でも、オゴニに支払われるのは、たったの1.5%である。
ケンは、国際人権委員会大会(スイスで行われた)に行こうとした時、パスポートを没収されて出国できなかった。
そんな弊害にも屈することなく、ボディショップの創始者アニタさんから援助を受けることにも繋がっていった。
世界の人権団体も、BBCや英タイムズ紙もオゴニのために運動や訴えをするようになって行った。
オゴニの住民たちも、自分の意志を持ち、政府に対して毅然とした態度をとるようになって行った。
1884年、ベルリン会議において、アフリカの国の境界線は決められた。
国民国家という考えが最盛期を迎えていたヨーロッパが、それを無視してアフリカの国の線引きをした罪の代償は本当に大きい。
オゴニは、1914年、イギリスに攻撃され、無理やりナイジェリアに組み込まれてしまった。
イギリスによって、民族は併合され、(イギリスの)シェル石油によって環境は破壊され、二重の苦しみをオゴニに植えつけられた。
ケンは、民族による自治と、環境と資源のコントロールを訴える。
しかし、ヨーロッパはアフリカはいつまでも“植民地化”していればいいと思い、前進(発展)を望んでなどいない。
けれども、意志さえあれば、必ずできる、とケンは希望を捨てなかった。
世界は、ケンの希望を叶えることはできなかった。
ケンは、8人の同士とともに処刑された。
ケンは、イギリスの友人に獄中から手紙を書いている。
「精神的には僕は勝利している。」と。
1995年、ケンは処刑された。
その1年前、サッカー・ワールドカップで“アフリカ旋風”を起こし、「これからはアフリカの時代」と言わしめたのがナイジェリアだった。
それもまた、静かなる民族の犠牲の上に立ってのことだった。
ナイジェリアで石油が発見された1950年代から、日本も高度成長期を迎えようとしていた。
そんな経済成長も、誰かの犠牲の上でしか成り立たないのなら、いったい、発展とか経済成長とか、何の意味があるのだろうか?
こういう現実を考えるとき、私は日本に生きていることに虚しさを覚える。
最近のコメント